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by carthaginois

荒川静香の挑戦、“トゥーランドット”変貌のドラマ再び②

04年3月。ドイツ、ドルトムント。世界選手権。総合2位で迎えたフリー演技。最終グループの一番滑走。黒の衣装に身を包んだ荒川選手が氷上に登場する。そしてここから鮮烈な変貌のドラマが始まった。。                   

まずはオープニング。畳み掛けるように繰り出される3回転ジャンプの連続、その連続に圧倒される。まず3回転ー3回転ー2回転。そしてすかさず3回転ー3回転。これで決まった。この2つのコンビネーション・ジャンプの相次ぐ成功が、この演技に、スケールの大きさと決定的な凄味とを与える。                                                     この神懸り的ともいえる、フィギュア・スケート史上に残る演技には、様々な荒川選手の”変貌”のドラマを読み取ることが出来る。まずは、この演技の中での変貌のドラマ。冷酷無常な女王トゥーランドットの、おさまることをしらぬ怒りが巻き起こす壮絶な嵐。しかしやがて真実の愛を知ることにより、その氷の呪文はみるみるとけ、歓喜が爆発、祝宴の舞の華を至る所に咲かせながら、最後は熱狂のうちに至福の時を迎える。荒川選手はその変貌のドラマを、その演技で見事に体現した。 2回目のトリプル・ルッツを決めた瞬間の、感極まった荒川選手のありのままの表情が素晴らしい。                   

この演技には、トゥーランドット姫の変貌のドラマの他にも、このシーズン中での演技の変貌のドラマ、そしてこの数年での彼女の変貌のドラマといったものが、何重にも積み重なって垣間見られ、燦然と輝く。                                                 競技場いっぱいの観客のスタンディング・オーベーションと熱狂的な拍手を受け、審査員からも高得点を獲得、結局荒川選手を、その日は精彩がなかったコーエン選手も、元チャンピオンの意地を見せたクワン選手も上回ることが出来ず、荒川選手の初優勝が決まった。この彼女にぴったりの「トゥーランドット」の演技により、予想での優勝争い圏外から、実力で自らもぎとった堂々たる勝利であった。                   

荒川選手は、世界フィギュアでの優勝後、度々インタビューで、「ライバルは誰でもなく自分自身」「自分が自分を追いかける」といった発言をしているが、まさに今回、2年前と同じ、モロゾフ振り付けによる「トゥーランドット姫」によるプログラムを滑ることになり、あの時の演技に真っ向から挑戦する形になった。しかし超えるべきハードルは高い。一方、技術点に直接つながらない、ロング・イナ・バウアーをあえて取り入れるとのこと。英断だと思う。その勇気のある選択に拍手を贈りたい。彼女の健闘を、荒川選手が、その持てる力を十二分に発揮して、自身納得のいく最高の演技が魅せられるように、心の底より期待したい。なぜならその演技が発する光は、決してその瞬間に消えてしまうものではなく、多くの人たちの記憶の中でいつまでも色あせず、きらきらと輝き続け、そして私たちの“生”を力強く励ましてくれるものだと思うので…
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by carthaginois | 2006-02-06 20:10 | オリンピック