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フィギュアスケートを外野から楽しむ&応援するための会


by carthaginois

第三の女

先月のジャパン・オープンで北米チームの一員として初参加した長洲未来選手。
1993年4月16日生まれ、ということで15歳になったばかり。来シーズンからいよいよシニアの国際試合に鳴り物入りで登場、ということで活躍が期待されているけど、長洲選手をはじめとして、キャロライン・ジャン選手、レイチェル・フラット選手などが形成するアメリカの新世代勢力の動きが、これからオリンピックまでの2シーズン、一つ大きな鍵となるのかなぁと、全くこれからどこまで伸びるか未知数なだけに、恐ろしくも、楽しみにも思えたりします。

これはまったくの私見、偏見、妄想によりますが、その資質からして、今の段階で、アメリカの代表として出場するであろう長洲未来選手が、バンクーバー・オリンピックの金メダルに一番表彰台の中央に近い選手に思えることもあります。その若さと勢いと新鮮さで一気にパーーーっと獲ってしまうことも大いにありうるかなぁと…

現在、実力で東の横綱、西の横綱、2人飛びぬけているのは、誰もが認めるとおり浅田真央選手と隣国キム・ヨナ選手の両横綱で、この番付はバンクーバーまでおそらく変わらないだろうとは思うのですが、ここ最近のオリンピックを見ていると、一般に広く流布している予想での優勝候補というものが、そのまま結果にまっすぐつながっていない。実際に優勝したのは、下馬評での本命馬、または対抗馬でもなく、まさか優勝とはそれほど思われていなかった、〝第三の女"がヌっと横から出現して、とんびが油揚げさらっていく方式で、痛快にかっさらっていくというケースが、ソルトレーク・シティー、トリノと2大会続いている。

素人が勝手に想像するに、オリンピックで選手にかかる重圧というのは、想像をはるかにはるかに絶するものに違いないと、一般人よりずっとずーっと強靭な身体と精神を持っているであろう選手個人が、内面にもっているであろう強い思い強い意志というものも、全く別のものに変換させて、粉々に砕いてしまうほどに、世間の漠とした大きな期待や利害の渦の奔流に飲み込まれてしまい、迷い子となり、我が往くべき目的地を見失ってしまうということも多々あるのかなぁと…。

思い出されるのは伊藤みどり選手。
初出場した1998年カリガリー・オリンピックでの溌剌とした伊藤みどり選手の演技。世界中の多くの人の前で、オリンピックの場で、自分の演技を見てもらえるのが嬉しくて嬉しくてたまらないという感じで、プレッシャーなど無縁という感じだった。そんな伊藤選手でも、優勝候補で迎えた4年後のアルベールビルでは、過剰なまでの日本国民の期待の重圧を一身に背負い、別人のようだった。カルガリーで見せた生き生きとした伊藤選手の姿は、フリーの後半で2度目のトリプル・アクセルに挑戦し見事成功させ、急に生き返ったようになるまで、それまではずーっと見られなかった。

それからミシェル・クワン選手もソルトレークで、イリーナ・スルツカヤ選手はトリノでと、経験と実績を重ね、開催地の有利もあって大本命で迎えた大会ではそれぞれ、ベストな演技どころか本人比であまりよくない出来の演技しか示すことができなかった。

マスコミの過熱ぶり、オリンピックでは、普段フィギュアスケートを全く見ないような人たちも見て応援する。国民すべての期待を選手たちがそれぞれ背負うことになる。優勝候補であればあるだけ、獲得したビッグタイトルが多ければ多いほど、それだけ期待も大きく、背負う負荷が、嵌められる足かせがとてつもなく重くなり、他の選手たちと同じスタート地点からの出発とはいかないのではないかと…。だから実績面では絶対的有利でも、実はとても不利な状況で競技に立ち向かわなくてはいけないのではと…、世界フィギュアでは克服できる範囲内でも、オリンピックではプラス面をマイナス面がはるかに凌駕し、それが選手をがんじがらめにしてしまい、本来持てる力を出し切れずに終わってしまうという面があるのではないかと…

なのでオリンピックに限っては、優勝候補のトップ2選手に比べればちょっと精神的に身軽な〝第三の女"が実は一番おいしいスタンスなのかもしれないと…。一般の予想とは違って、〝第三の女"が実は本当の本命かもしれないと…。そういえばこの2大会のオリンピックチャンピオン、偶然にもそのシーズン国内大会が3位。まさに〝第三の女"!。

それに”第三の女”の活躍は、根源的に一般大衆に強く求められているということもあると。
例えば大相撲(夏場所開催中、刈屋アナウンサーつながりもありということで、大相撲!)…この2年朝青龍関と白鵬関の優勝完全独占状態で、相撲ファンは、柱である優勝レースに関してはあきらめムード、日本国民飢餓状態に陥っているように思える。目新しい展開、ニュー・ヒーローの登場、〝第三の男″を一般大衆は渇望していて、琴欧洲関でも稀勢の里関でも豪栄道関でも誰でもいいから誰か別の力士が、次優勝した時にはきっと座布団のトルネード、大大フィーバーがまき起こる土壌が、もうカラカラに干上がっている。

〝第三の女"の存在が世界を潤し、世界をより面白くする。
人の性向として、上昇するものに強く惹きつけられるってこともあるかもしれない。
安藤選手がそうなるかもしれない、コストナー選手かもしれないし、他の誰かかもしれない…。長洲選手もそんな〝第三の女"の最有力候補の一人やないかと、そない思いますた。まぁ先のことはどうなるのやら全く分からないですが…「一寸先は闇」ならず、「一寸先を光!」としていきたい…ですね。
by carthaginois | 2008-05-15 00:56 | オリンピック