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フィギュアスケートを外野から楽しむ&応援するための会


by carthaginois

フィギュアの言語

今年は黒澤明監督没後10年なんだそうで、NHKの衛星放送では彼の全30作品を1年ぐらいかけて放送しているけれども、少し前に追悼番組の一環として、映画解説でおなじみの淀川長治さんが黒澤明作品について語った、生前のインタビュー映像が放送されていて、その中で淀川さんが、黒澤さんの映画には世界の人々にも通じる″映画の言語”というものがあった、みたいなことをおっしゃられていた。
淀川さん黒澤明を語る(Youtube)

グランプリ・シリーズ開幕戦、スケート・アメリカで圧勝したユナ・キム選手の演技を見ていて、この淀川さんの言葉が思い出されました。
もし、゛フィギュアの言語”というものがあると想定するなら、キム選手は今、そのもっとも堪能な使い手の一人に違いないと…

キム選手が持っているのはフィギュアの豊潤な万国共通語。それは一瞬にして世界の扉をもパッーと開くことの出来る魔法のキー。
いろいろな選手がいて、いろ~んな言葉を発している、その多彩さがまたフィギュアスケートを見ることの魅力のひとつだと思うけど、
耳をすませば、氷上から選手たちが発する、一つとして同じではないさまざまな味わいある言葉が聴こえてくるような気がします。

グランプリ・シリーズ第2戦、スケート・カナダ2位という立派な成績で再び表彰台に昇った村主章枝選手が氷上で発する言語というものも、長年楽しませていただいているせいか、とても親しみあるものに感じられます。
丁寧にじっくり造られた職人技、手造り感覚のぬくもりある感触、漂うポエジー。その彼女オリジナルの言語を駆使してさまざまな変奏曲を奏でている、新しいものにもチャレンジするひたむきな姿勢というのがまた素晴らしいなぁと…。
スケート・カナダでのパントマイム、大道芸人の動きを取り入れての愉快なエキシビション、外国人観客を前にしてのアッパレ!ななりきり演技、コメディエンヌぶりにはホロリとさせられました。村主選手の演技を見ていると時々、彼女のスケートに賭ける情熱というものが、突然目に見えない大きな炎となって伝わってきてジーンと感動させられる。演技で人に何かを伝えることが出来る、そういう意味で、彼女は芸術家の域に達しているんだなぁと思います。今シーズンこれからの演技も楽しみです。


ロシア杯での演技から
Fumie Suguri 2008 Cup of Russia Ex.(Youtube)
by carthaginois | 2008-11-05 06:07 | グランプリ・シリーズ